- 損益計算書から何が分かるの?
- 損益計算書はどうやって読めばいいの?
- 損益計算書の見るべきポイントはどこ?
株、為替、暗号通貨の投資経験者の私が、こんな疑問にお答えします。
この記事では、損益計算書の概要、流れ、内容から何が分かるのかを解説します。
この記事を読むと、損益計算書が読めるようになり、株式投資をするときの分析能力が一段上がります。
【株式投資】企業のお金の流れが分かる | 損益計算書(P/L)の読み方を徹底解説
損益計算書(P/L)は企業の家計簿
損益計算書には、企業の1年間(会社が定めた年度)の売上、費用、利益、損失が書かれています。
今年はどれくらい儲かったのかな?宣伝のためにいくら使ったのかな?というのが分かります。
P/L(ピーエル)は「Profit and Loss」の略称で、お金の流れを表すことから「フロー」とも呼ばれています。以下、損益計算書のことを「P/L」と呼びます。
P/Lを読むために必要な知識は、「足し算と引き算」だけ。数字が苦手なあなたも、安心して下さい。
損益計算書(P/L)の構造
損益計算書の見方
損益計算書は、上から下に見ていきます。「売上高」からはじまり、収益はプラス(+)して、原価や費用はマイナス(-)していきます。
損益計算書(P/L)の中には5つの利益がある
❶ 売上総利益(粗利)
❷ 営業利益(本業から得た利益)
❸ 経常利益(本業以外の損益を加味したもの)
❹ 税前利益
❺ 税引後当期純利益
後々大事になってくるので、今は5つあるんだなということを知っておくだけでOKです。
それでは、各項目について具体的に説明していきます。
売上高とは商品やサービスを提供することで得られる利益のこと
売上高とは商品を売ったり、サービスを提供することで得られる収益のこと。
ラーメン屋さんで例えると、ラーメンを売って、頂いたお金が「売上高」です。
サービスとは、形のないものにお金が発生することです。
塾の先生が授業を教えてお金を貰ったり、テモミンでマッサージを受けるようなことです。
※余談ですが、「収益」と「収入」の違いを知っていますか?
収益とは、利益が発生したときに使う言葉ですが、収入とは、現金が会社に入ってきた時に使うものです。
例えば、クレジットカードで支払いを受けると、収益は発生しますが、現金が会社に入ってくるのは少し後になるため、現金の受け取り時に収入が発生します。
売上原価とは仕入れや製造にかかる費用
商品の仕入れや加工、製造にかかる費用のことです。
ラーメン屋さんではまず、ラーメンを作るために、麺やスープの元、メンマ、ネギ、調味料などの材料を購入する必要があります。
これが「仕入れ」です。
ラーメンを作るためには、お鍋や、包丁が必要ですね。これが「加工」にかかる費用です。
製造するためには、お店を借りる家賃やキッチン、換気扇などの設備が必要です。
売上総利益(粗利)とは売上-原価
で求められるもので、粗利(あらり)とも呼ばれています。
お店を経営するときには、粗利率が高い事業が良いと言われます。
これは、ラーメンを販売したときに、材料費などの費用が少ない方が儲けが出るよね♪というのを%で出したものです。
粗利率とは、売上高に占める、粗利のこと。
粗利率(%)=粗利÷売上高
で計算できます。
粗利率が低いと、商品やサービスをたくさん販売しなければいけません。
ラーメン一つの儲けが少ないからです。
その逆で、剥離多売(はくりたばい)という言葉があります。
小売店(スーパーマーケット)のような業種では、商品ひとつひとつの利益が小さいので、大量に販売しなければいけません。
つまり、従業員を多く雇わないと、仕事が多すぎて、手が回らなくなります。
従業員を増やすということは、お給料を払わなければいけないので、その分お金がかかってしまいます。
販管費とは販売費および一般管理費のこと
人件費、減価償却費、租税公課、交際費、旅費交通費などがあります。
- 人件費は、働いている皆さんのお給料です。
- 減価償却費は、ザックリ説明すると、ラーメンをつくるために必要な機材にかかる費用です。
- 租税公課は、税金です。
- 交際費は、飲み会や社員の食事代など、一定額まで経費にできます。
- 旅費交通費は、皆さんが出勤するときのガソリン代や、出張にかかる飛行機代などです。
費用ですから、お金が出ていくので「マイナス」します。
営業利益とは本業から得た利益のこと
売上総利益(粗利)から販管費を引くことで求められます。
本業以外でもらったお金は、営業外収益や特別利益と呼び、別の利益に分けられます。
営業外損益とは本業以外で出た収益と費用
通常の営業活動以外から生まれる収益と費用のことです。
通常の営業活動とは、本業で利益を得るためにする活動のこと。
営業外収益はお金が入ってくるので「プラス」。
営業外費用はお金が出ていくので「マイナス」します。
❶営業外収益の項目
- 受取利息
- 有価証券の利息
- 不動産賃貸料
- 雑収入等
受取利息とは、銀行にお金を預けてもらえるお金のこと。
有価証券の利息とは、株を持っていることでもらえる配当金のこと。
不動産賃貸料とは、アパートやマンションを貸してもらえる家賃収入のこと。
雑収入(ざっしゅうにゅう)とは、上のどれにもあてはまらないものです。
❷営業外費用の項目
- 支払利息
- 社債利息
- 有価証券売却損
- 雑損失等があります。
支払利息(しはらいりそく)とは、銀行からお金を借りることで発生する手数料のこと。
社債利息とは、働いている従業員に自分の会社の株を買ってもらったときに払う手数料のこと。
有価証券売却損(ゆうかしょうけんばいきゃすそん)とは、株を1000円で購入したのに、500円でしか売れなかったときに出た、損失分のこと。
雑損失は、上のどれにも当てはまらない損失のことです。
経常利益は本業の利益に本業以外の利益、損失を足し引きしたもの
業界では、経常(ケイツネ)と呼ばれたりもします。
本業で得た利益(営業利益)に本業以外で得た利益(営業外収益)を足して、本業以外で出た損失(営業外損失)をマイナスしたものです。
例えば、ラーメン屋さんの本業は、ラーメンを売ることでお金をもらうことです。
このラーメン屋さんが、不動産投資と株式投資をしていた場合。
アパートを貸して収入を得ていたら、この家賃を営業外収益として見ます。
株式投資で失敗して損をしたら、営業外損失として見ます。
特別損益は臨時的にでた収益、損失のこと
特別利益、特別損失のことで、臨時的に起きた収益や費用のことです。
特別利益はお金が入ってくるので「プラス」
特別損失はお金が出ていくので「マイナス」します。
- 保有していた不動産を売却して得た利益や損失
- 株を売却による利益や損失
- 災害などによる損失
- 引当金による戻入益等があります
税引前利益(税引前当期純利益)とは?
で求められるもので、税金を差し引く前の利益です。
法人税等とは?
法人税、法人住民税、法人事業税のこと。
税金は支払わなくてはいけないものなので「マイナス」します。
税引後当期純利益とは最終的な利益
純利益と呼ぶ場合は通常、この税引後当期純利益のことを指します。
実際の損益計算書を見てみましょう
出典:株式会社ニトリホールディングス有価証券報告書2020年2月期
少し細かくはなっていますが、流れは理解できますね。
売上から費用(仕入れにかかる費用、販売にかかる費用、従業員への給与等)を支払い、さらに税金を支払った後に残ったものが、企業にとって純粋な利益である「当期純利益」となります。
内訳について知りたい場合は、有価証券報告書内の詳細で確認できます。
損益計算書で出てくる代表的な用語を少しだけ解説します。
受取利息
企業が銀行へ預金することにより貰える利子や利息。国債や社債等を持っていることで貰える利子や利息のこと。
受取配当金
他の企業の株式を保有していたり投資信託を保有していることで貰える配当金のこと。
支払い利息
銀行から借り入れをしてることで支払う利息や社債をもっている相手に対して支払う利息のこと。
減価償却費
固定資産を取得した時に支払う費用を、一括ではなく決められた年数によって少しずつ費用計上していくこと。
売上原価や販管費へ計上します。
減損損失(げんそんそんしつ)
事業投資ででた損失のこと。所有している株や工場などの価値が下がった時に、損失として特別損益に計上します。
損益計算書の見るべきポイントは推移
PLで見るべきポイントは、5〜10年の推移とその理由です。
❶売上高は伸びているのか?
売上高は一番最初にくる項目です。これが伸びていないということは、企業が成長していないということ。
つまり、今後もあまり期待できないということです。
❷営業利益が伸びているか?
営業利益が伸びているということは、本業である事業が上手くいっているということです。
逆にここが伸びていないのに、最終的な利益が増えていたら、なぜなのか?原因を確認しなければいけません。
理由によっては「あなたの会社はどこに力を入れているのですか?」となるからです。
❸当期純利益は伸びているか?
当期純利益は、税金や費用を引いた後の最終的な利益です。お金が入ってこないことには、会社は倒産してしまいます。
売上や営業利益が伸びていても、他の部分でお金を使ってしまい、手元に現金が残っていないことがあるからです。
分析の応用
・EBT(Earning Before Taxes)
・EBIT(Earnings Before Interest and Taxes)
・EBIAT(Earnings Before Interest After Taxes)
・EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)
EBT (イービーティー)
Earning Before Taxesの略称で金利差引後税前利益のこと。
EBIT(イービット)
Earnings Before Interest and Taxesの略称で金利と税金を差し引く前の利益のこと。
営業利益+金利損益以外の営業外損益(事業用資産から得られる営業外損益のみ加減算する)
EBIAT(エビアット)
Earnings Before Interest After Taxesの略称で金利を引く前、税引後利益のこと。
EBIT×(1 ー 法人税実効税率)
EBITDA(イービットディーエー)
Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortizationの略称で、金利差引前、税引前、償却前利益のこと。
会計基準や税金等が異なる企業との比較や減価償却費を除いて企業の純粋な稼ぐ力を判断したい場合に使用される。
計算式は複数あるが一番簡単な計算方法は❶
❶ 営業利益 + 減価償却費
❷ 経常利益 + 減価償却費 + 支払利息
❸ 税引前当期純利益 + 減価償却費 + 支払利息 + 特別損失
まとめ
損益計算書とは企業の家計簿。1年間の利益や費用が書かれている。
読み方は上から下に読んでいく。収益はプラス。費用はマイナスする。
見るべきポイントは、各項目の5〜10年の推移と理由。
P/Lの読み方をマスターして、成長が期待できる企業を見つけられるようになりましょう。